HONZIのこと

先日、マタハリのライブで良原リエさんがFISHMANSの「ひこうき」を演奏しているのを観ていたら、なんとなくHONZIのことを思い出してしまった。mixiの過去の日記(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=575493814&owner_id=1371875)を読み返してみると、HONZIの死を知ったのはその日の内の深夜のようです。日記のタイトルは「湖に浮かべたボートをこぐように、人は後ろ向きの未来へ入ってゆく。目に映るのは過去の風景ばかり。明日の景色は誰も知らない。」になっている。たしかその頃にラジオかなにかで耳にした言葉を引用したのだと思うのだけど、それがなんだったのかは思い出せない。


HONZIの死を知った時、ただ「なんで?」としか思えなかった。動揺した。HONZIは元気だと思っていた。それくらい、俺はHONZIのことを知らなかった。2005年のFISHMANSの再結成ライブ、LONG SEASON REVUEで一度だけHONZIを目にしたのだけど、その終盤でおもむろに帽子を取り、スキンヘッドを披露したHONZIを見ても、「エキセントリック!」としか思わなかった。HONZIは、癌だった。
あの時のHONZI、かっこよかったな。バイオリンを弾く姿も、キーボードに手をかける姿も、ただただ鮮烈だった。白い肌が赤い照明に照らされて、「ああ、これはHONZIの音そのものだな」なんて思った。なんてきれいで、透き通って、官能的な音。この時HONZIが抱えていた苦痛がどれほどのものなのかは知る由もないけど、今にして思えば残された命を燃やすようにして演奏していたのかもしれない。そう思えてならない。
早川義夫さんの日記によると、晩年の2007年はバイオリンを持つのも厳しい状態だったということでした。それなのに、HONZIの命日となってしまった9月27日にもその翌日にも、HONZIはライブの予定を入れていたみたいです。入院などもあり、9月の中頃にはすでにキャンセルの連絡が入っていた、とはいうものの、そんな時期にまでなっても音楽を離そうとしなかったHONZIのことを心から尊敬します。ただしがみついていたわけではない。体調不良を差し引かずとも、その演奏が本当に素晴らしかったということは早川義夫佐久間正英HONZI名義で発表されたライブアルバム『I LOVE HONZI』を聴けば身がよじれるほどよくわかります。特に最後の演奏(8月26日)となった「I LOVE HONZI」はHONZIの演奏もさることながら、早川さんのHONZIへの想いが透けて見えるような名演だと思う。早川さんの想いが鏡になって、HONZIはどこまでも音楽家だったんだということが映し出されています。


mixiの日記にも書いたけど、知り合いでもない著名人の死はどう捉えたらいいのかわからない。ただ悲しいし、ただ悔しい。ただ、楽しいことよりも、そういうことを記録しておきたいと思ったのも、ブログをやっていこうと思い直したきっかけのひとつです。悲しいことは忘れていってしまうから、人はそういう生き物だから、たまにはこうしてアップデートしていきたいと思ったのです。
もうすぐ、HONZIの命日。