2013年9月1日(日)『得三15周年記念特別企画』早川義夫 / 山本精一@得三

山本精一

1. Days
2. 水
3. めざめのバラッド
4. ゴミ箱の中
5. 小さなもの(羅針盤
6. 宝石の海
7. そして船は行くだろう(岡田徹 cover)
8. 野の人の野のうた(Lovejoy cover)
9. まさおの夢
10. 空の名前(ya-to-i)
11. 新曲(わずらわしいくらい僕らには時間がある〜)
12. DISCORD

早川義夫

1. ラブ・ジェネレーション(ジャックス)
2. 純愛
3. パパ
4. グッバイ
5. はずかしい僕の人生
6. 僕の骨
7. 猫のミータン
8. 父さんへの手紙
9. 音楽
10. 身体と歌だけの関係(Hi Posi cover)
11. 君が月だよ(新曲)
12. いつか

早川義夫山本精一

1. この世で一番キレイなもの
2. サルビアの花
3. からっぽの世界(ジャックス)


encore
4. 埋葬
5. 堕天使ロック(ジャックス)


早川さんの歌は早川さんそのもののようで、早川さんが直接流れ込んでくる。
山本さんの歌は山本さんそのもののようで、時折山本さんはそこにいない。
「僕らの歌があるのは早川さんのおかげです」と山本さんは言いました。
そうなんだと思う。
それぞれにきっかけとなったものや目標としてきたものがある。
でも、突き詰めれば、そこには自分しかいない。
歌というのはどこまでも孤独な世界なのかもしれない。
そういう歌に、どうしようもなく惹かれてしまう。




この日の山本さんは今までにないくらい丁寧な歌と演奏でした。
嘘か真か、大阪東京ときて最終日の名古屋だけのロック編成。
大先輩の早川さんといっしょだったからなのかな。
こんなことはもう二度とないんじゃないだろうか。
「最後くらいは好きにやらせてもらいます」
「いつも好きにやってるけど」
「今日はこれからいろいろあるんで是非楽しんでいってください」
「こういうことを言うのは非常にめずらしい」
「小学生の時朝のテレビで(ジャックス)を観ました」
「今日はもう(トイレに行っても)いいです」
「やっぱり名古屋の人は膀胱が特殊だと思うわ」
機嫌がよかった、んだろうか。


ついにチャイナさん在籍時の羅針盤の曲をこの耳で聴いた。
「小さなもの」
ずっと待ち望んでいた気もするし、当たり前に信じていた気もする。
ラブジョイの「野の人の野のうた」もやった。
「空の名前」は終盤音程を上げて歌った。
小さな特別がたくさんあった夜。


新曲はまた特別な曲になる気がしている。
誰がどう思おうと、たとえ山本さん自身がどう思うと、ただ自分がそう思う。
たくさんの人が傘をさしている。
自分はさしていない。
有象無象が通り過ぎていく中で、自分だけが立ち止まったままだ。
なぜだか「ふたつの木のうた」を思い出した。
山本さんの歌は、不在の歌だ。




早川さんに合わせる山本さんのギターは信じられないくらい透き通っていた。
山本さんが歌う時は早川さんがピアノを合わせる。
自分の歌とはいえ、人の歌のためにピアノを弾く早川さんは新鮮だ。
二人の歌、を聴いて思う。
人と人との距離感に絶対値なんてないんだと思う。
この世で一番キレイなものは、その間のどこかにある。
それこそが、人が一人であるということの、唯一の救いではないだろうか。
そんな風に思ったりした。




早川さんの歌は見えるから追いかけてしまう。
山本さんの歌は見えないから探してしまう。
共通しているのは、歌っている時は絶対的にひとりだということだと思う。
そこに求めるなにかがあるなら、そのなにかは歌の外にある。


人はなんのために歌うのか?
それは歌う本人だけが知っていればいい。
そうは思っても、少しだけのぞいてみたい。