2011年10月28日(金)穂高亜希子『ひかるゆめ』発売記念ツアー@ハポン

Rego with 葉っぱの裏側シスターズ

1. (吉川:リコーダー、古賀:リコーダー)
2. (吉川:木琴、古賀:リコーダー&メトロノーム
3. (吉川:ギター、古賀:アコーディオン
4. (吉川:ドラム、古賀:バイオリン)
5. (吉川:ギター、古賀:ドラム)


初めてRegoという人の歌を聴きました。ポップなお名前とは裏腹に、不安になるような不安定な歌とキーボード。弾き語り。ピアノの音って高音も低音も、こんなに不穏な響きだったかな。葉っぱの裏側シスターズのお二人がバックを努めていたのだけど、ほんとに「努める」っていう漢字がよく似合う演奏でした。一曲目からリコーダー二本で、しかも縦笛なのに横笛みたいに持って。Regoさんはそんな葉っぱの演奏を「心強いかぎりです」と言っていた。Regoさんの歌と対比して、というのもあるかもしれないけど、どんな楽器をどんな風に鳴らしてもファニーに聴こえてしまうから不思議だ。Regoさんは歌の途中でも、「ワンツースリーフォー」とカウントしたりする。人に聞こえないような小さな声でカウントする。自分の気持ちをひとつひとつ確認しながら歌うような、グッと惹きこまれる歌い姿だった。

夕食


夕食は以前にパルルであったオクノ修さんのライブの前座で観たことがあって、その時は正直、イマイチだなと思った。1stアルバムがマヘルの工藤冬里プロデュースということもあって「そういうバンド」だろうという先入観もあったのかな。ムダに(というと失礼だけど)すき間を作っていくようなとっちらかったサウンドで、まあ特に興味を引くこともなく。それがこのライブでは、月並みな言い方だけどバンドの一体感が増していて、もう別物のバンドかというくらいすごくよかった。ギター、ウッドベース、ピアノ(またはドラム)のアンサンブルが素晴らしくて、必要に応じてすき間を落とし込んでいくようなムダのない演奏。ほんとに前回観た時とは全然ちがう。かっこよかったです。

穂高亜希子(with吉田悠樹服部将典

1. 道
2. 緑
3. どんくまさん
4. 静かな空
5. こころ
6. 城
7. まだ題名のない曲(ああ僕はなにを見ているんだろう〜)
8. 夢のように
9. いつか


Encore
10. ひかるゆめ


やっと穂高亜希子さんの歌を直に聴ける。この瞬間をずっと心待ちにしていました。
一曲目はアルバム『ひかるゆめ』でも一曲目を飾る、「道」。初めて穂高さんの歌声に触れて、頭に浮かんだイメージは『ひかるゆめ』のジャケットでした。穂高さんの歌声はどうしようもなく儚い。あのジャケットに伸びる道のように、穂高さんの歌声もいつかは途切れる所が来るのだろうか。この歌声は今しか聴けない歌声、そう思いながら穂高さんの歌を聴いた。
続く「緑」は『ひかるゆめ』の中でも一番印象に残っている曲です。緑という言葉はアルバムの中でもたびたび出てくる。この日の穂高さんは切り細工のような花柄の模様をあしらったエメラルドグリーンのワンピースに緑色のカーディガンで、もしかしたら緑という色はアルバムの中でもひとつのテーマになっているのかもしれないと思いました。小さい音で爪弾かれるギターにマンドリンの音色がきらめいて、すごくきれいだった。
「静かな空」では「とてもいい木のピアノがあるので」と言ってピアノの前へ。ハポンのピアノが急に格調高いものに思えた。とても繊細で、力強いピアノ演奏。二胡という楽器は気配の楽器だと思う。実際に音が鳴る少し前から頭に音が流れてくるような気がする。
「城」ではいつも閉じこもってばかりいる自分を思い出す。まだ「題名のない曲です」と言っていた曲、すごくよかったな。どうにもならない気持ちからの出口を探していくような歌詞。「城」と続けて聴けてよかったです。
穂高さん、「次は「春風」を」と演奏しかけてギターを置く。「春風」と「夢のように」で迷っているようでした。『ひかるゆめ』は3月5日と震災直後の3月13日に録音されていて、迷いながらも録音を決行したこと、そんな3月13日にできた曲が二曲あるということをお話しされていて、選ばれた「夢のように」はその内の一曲だそうです。もう一曲は「春風」だったのかな。歌詞からしてもそう思える。「夢のように」の“いつか思い出になる”という歌詞はとても強く響いて、この歌を作った時の穂高さんの気持ちが痛いくらい伝わってきました。穂高さんは、歌い終わった後のMCで泣いていた。この歌のあり方についてだっただろうか。こちらも感極まってしまっていてよく聞き取れませんでした。でも、きっと言いたかったことは歌を通して伝わってきたことといっしょなんだと思う。
最後は「いつか」。ピアノ、二胡コントラバスがいっしょになった演奏は賛美歌のように高らかに響いて、穂高さんの歌がこの先もずっと続いていったらいいなと思いました。何度も消された穂高さんのブログや、『ひかるゆめ』の裏ジャケット、遠くに消えていく道を思い浮かべながら。
アンコールで歌われた「ひかるゆめ」はアルバム『ひかるゆめ』が録音された後にできた曲だそうです。夢と現実の間、絶望と希望の両方を歌う、まさに『ひかるゆめ』のイメージを具現化したような曲でした。穂高さんの歌はもっと遠くまで届けられるべきだと思う。心の奥まで届く、そういう力が穂高さんの歌声にはあると思うから。