2011年11月7日(月)アナログばか一代名古屋編@ハポン

アナログばか一代(湯浅学樋口泰人

Sunny And The Sunliners - Talk To Me
The Meters - Chicken Strut
Alvin Robinson - Empty Talk
Fats Domino - Blueberry Hill
Bob Marley - Trenchtown Rock
Peter Tosh - Legalize It
Slits - Grapevine
Slits - New Town
P.I.L. - Four Enclosed Walls
Flying Lizards - Money(Beatles
Flying Lizards - Sex Machine(James Brown
Devo - Uncontrollable Urge
Devo - Mongoloid
Residents - Diskomo(Eskimoの曲?)
Telex - Rock Around The Clock(Bill Haley)(45回転)
Telex - Rock Around The Clock(Bill Haley)(33回転)
Ian Dury - Sex & Drugs & Rock & Roll
Run-D.M.C - Walk This Way
Prince – Kiss
Neil Young - Bandit
Neil Young - Ohio
Bob Dylan - Maggie's Farm
Beatles - Money
The Ronettes - Be My Baby
Brenda Holloway - You've Made Me So Very Happy
Nancy Sinatra & Lee Hazlewood - You've Lost That Lovin' Feelin'
Marvin Gaye - What’s Going On


開場から程なくして会場のハポンに着。お金を払って中に入るとさっそくご機嫌なミュージックがナウ(死語)ですよ。開始後の解説によるとヘンリー・マンシーニの楽曲をクインシー・ジョーンズがアレンジしたものだとか。ローランド・カークが演奏に参加と言っていたかな。普段手に取らない音楽だからということもあるけど、ハポンがいつもとはちょっとちがった雰囲気。席は最前のスピーカーまん前を確保しました。しかし、さすがにこの席ではこの前のDOMMUNEみたいにメモを取りながらというのははばかられる…。ここは自宅じゃないしね。選曲リストを頭で記憶するのに苦労しました。(誰かレジデンツの曲名わかる人いたら教えてください→わかりました!)湯浅さんの自宅から持参したというプレイヤーやスピーカー、間近で眺めるだけでも雰囲気ある。自宅じゃないとは言ったものの、どこか落ち着くような感覚がする。湯浅さん宅はこんな感じなのかな。
という感じでほのぼのとスタート。一曲目に選ばれたのは「Talk To Me」。ルイジアナのヒット曲。おそらく60年代であろう、哀愁漂うボーカル。音がデカい!湯浅さんはここ最近、別れたサーストン・ムーアとキム・ゴードンの気分なんだそうです。曰く、「前向きな別離」だとか。そうするとこの選曲にも見えてくるものがある気がしました。ちなみに少し前は自殺した中村とうようの気分だったとか…。そこからルイジアナつながりで数曲。「まだイケるでしょ?」と音量はどんどん上げられていく(笑)。湯浅さん、特にファッツ・ドミノのことを語る時は目が輝いてたな。ジャマイカの音楽であるskaがニューオリンズルイジアナのJAZZやR&B、R&Rを参考して作られたというのは有名な話だけど、ファッツ・ドミノの「Be My Guest」が大元だという話はためになりました。
お次はジャマイカつながりでボブ・マーリーへ。この前のDOMMUNEみたいに感覚的な回路でつなげていくDJプレイとはちがい、間に解説が入るので樹形図を辿っていくような具体性がある。ただ、湯浅さんのすごいところはその樹形図がものすごく大きいところ。具体性を伴いながらもどう転んでいくかわからない進行は湯浅さんの文章にも近いものがあるかもしれません。『Live!』の一曲目である「Trenchtown Rock」はこのシングルしかスタジオ録音がないという貴重なテイク。ピーター・トッシュの「解放せよ(邦題)」に関して、この感じでは“解放”されないよなあという話は笑えた。
ここからは怒涛の80年代パート。先頭を飾るスリッツはライブ盤でした。A面一曲目とB面一曲目で迷って両方プレイ。「Grapevine」と「New Town」、どっちもかっこいい!ここからステレオに切り替わったんだけど、やはりモノラルとは全然手触りがちがう。と、この話は後へ送ります。P.I.L.はやっぱりピンとこなかったかな。樋口さんが当事ゲームセンターのジュークボックスでフライング・リザーズを聴いたという話、時空が捻じれたような感覚でした(笑)。同じくフライング・リザーズの「Sex Machine」には抱腹絶倒。まるでポップな悪夢が延々と続いていくみたい。しかもその悪夢、なかなか覚めません。長い!湯浅さんも「しつこいんだよ」と一言(笑)。ディーヴォレジデンツ、フランスのテレックスと、どれも初めて聴いたけど全部おもしろかった。テレックスの「Rock Around The Clock」は一曲で二度おいしいと、45回転と33回転の聴き比べ。正規の45回転ではチープでオシャレ(当時)なビル・ヘイリーカバーが33回転ではわりとロックしててびっくりしました。なんでこんなことを試したかというと、当事は時間があってもお金がなかったからとのこと(笑)。この日の選曲についても家で聴く曲を選ぶのと変わらないと言っていました。曲を聴いていくのにも感覚的なやり方と樹形図をたどっていくようなやり方があると思うんだけど、どちらにしても80年代は今まで意識的に避けて通ってきていたのですごく興味深い内容でした。
少し趣向変わって、同じ80年代でも今度はイアン・デューリーイアン・デューリーも聴くのは初めてです。なんとなく名前からしてダサいイメージがあったんだな。「パブロック=ダサい」のイメージ。ところが、実際に聴いてみるとこれがめちゃくちゃかっこいいじゃないすか!思わず「セックス!ドラッグ!ロックンロール!」と叫びたくなりました。自然と体も揺れる。そんなテンションのまま「Walk This Way」へ。樋口さんからこの流れはDJのノリでしょう的なつっこみが入っていましたが、いやいや。たしかにこの流れはアガる!ヒップホップは当事最先端だったんだよなあという話が感慨深かったです。そういえばエアロ・スミスって映画『アルマゲドン』の曲くらいしか聴いたことない。まあ、興味ないしなあ。反面、ずっと気になってるのがプリンス。やばいなー。プリンスやばい。DOMMUNEのDJ湯浅学、今回のアナログばか一代と、もう高まる一方のプリンス熱。プリンスやばい(やばい三度目)。
流れをぶった切って新し目のLPを聴いてみましょうのコーナー。まずはニール・ヤングの『Greendale』から。新し目とはいっても、演奏も音もすごく粗い。ギターなんて弦が緩んでるんじゃないのか?ってくらいベンベンいってるし(笑)。でもなんというか、すごく伝わってくるんだな。空気が震えて音が鳴っているというのがよくわかる。こういう音を良い音というのかもしれないなと思いました。続いて同じニール・ヤングで『Decade』。持参したのはテストプレスの物で、やはりそれなりの値段がしたとのこと。かける曲は挙手してもらって選びましょうということになったんだけど、「Harvest」とか「Heart Of Gold」とか…。この中から一曲は選べませんて(笑)。個人的には「Walk On」とか聴きたかったかな(挙がらなかったけど)。クレイジー・ホースのことやらアーカイブ・シリーズのことやら、話がいろいろと脱線しておもしろかった。次はボブ・ディランの『Hard Rain』。この盤はセカンドプレスあたりまでの中から良いものを探して新しく作り直しているシリーズだそうです。こういう作業は聴いた感じだから数値化なんてことは到底できず、もう感覚でやるしかないと。伝統芸能みたいなものだから後継者を育てないといけないと言っていました。うーん、いろいろと奥が深すぎる話。
残りの時間も少なくなってきて、ここからはせっかくだからもうちょっとモノを聴いてもらいましょうという話に。さっきフライング・リザーズのカバーをかけてた「Money」、単純なかっこよさのギャップがもう(笑)。でもそれだけじゃなくて、やはりこのモノラルの臨場感。これはすごい。ステレオみたいに意図的に音を分けてあるものはある意味では不自然なものなんだと実感しました。もちろんステレオにはステレオのよさがあるんだけどね。でも爆音でモノラル、これ最強。爆音に包まれると音の位相までが手に取るようにわかる。ロネッツの「Be My Baby」などは目を閉じるとまぶたのすぐ裏ではロニー・スペクターが歌い、その少し後ろではバンドが演奏しているようで、もう感激のあまり泣きそうになってしまった。フィル・スペクターの仕事すごい。ウォール・オブ・サウンドに対する執念を見た気がします。しかし、「You've Made Me So Very Happy」には不意を打たれた気分。というのもこの曲、アルトン・エリスがオリジナルだと思っていたんです。いかに自分が偏った聴き方をしてきたかがよくわかる…(笑)。本当のオリジナルのブレンダ・ハロウェイという人は二番手どころか三番手にも四番手にもなれなかった人だそうで、そうするとこの曲名がまたグッとくると。そしてそこでまた、冒頭のサーストン・ムーアとキム・ゴードンの気分に戻ると(笑)。元々好きだった曲がオリジナルを聴いてより好きになってしまった。いよいよ佳境ということで、今度は樋口さんのセレクト。ナンシー・シナトラリー・ヘイゼルウッドという人の『Nancy & Lee』から「You've Lost That Lovin' Feelin'」。この曲名、さっきの「You've Made Me So Very Happy」と対照的だと樋口さん。雰囲気まで対照的で、哀愁の中に隠しきれない多幸感が潜んでました。この曲、好きだな。って、もうかかる曲かかる曲好きな曲ばっかりだ。最後は聴けばわかる曲と「What’s Going On」。マーヴィン・ゲイ、買おうと心に決めた。

ミニ湯浅湾(with おにんこ!・ベース、パンチ・ドランク・ガールズ・ギター)

1.シェーの果て
2.煙粉
3.ミミズ
「What’s Going On」が流れる中セッティング。ツイッター見ててミニライブがあるらしいということは知っていたけど、目の前で準備が進んでいくとやっぱりうれしい。とはいえ、余興のようなものなので感想はそこそこに。アコギを弾く湯浅さんもかっこよかったです。湯浅さんのストロークってなんか独特なんだよね。カクンカクンと膝を落としながら体を揺らす湯浅さん、なんか変な気分。早くまたフルの湯浅湾も観たいな。


今回のアナログばか一代で一番印象に残っているエピソードは「アナログから見ればデジタルの便利さってせこいんだよ。で、デジタルから見たアナログはばか(笑)。だってこんなに手間がかかることってないよ。」といったものでした。この「ばか」という言葉はイベント名になぞらえたという感じではなく、湯浅さんの口から自然と出てきた言葉のように思えます。それが本音なんだろうなあ。湯浅さんは今でも原稿を手書きで仕上げる正真正銘ののアナログばか。でもそれがマイナスになっているなんてこともなく、そのアナログな知識の中からこんなにも素晴らしい音楽地図を見せてくれる。こういう人を目の前にすると、やれDL音源だやれ電子書籍だという今の時代にも、もしかしたら別の道があるんじゃないかとさえ思えてきます。
アナログばか一代。湯浅さんから降りてきた膨大な音楽。たっぷりと浴びさせていただきました。アナログばか一代が月一で開催されている東京がうらやましいです。湯浅さんは人間国宝に指定するべき。名目はもちろんアナログばかで!