2010年07月10日(土)JB & PLAYGROUND@shin-bi

もう一週間も経ってしまったけど。。
素晴らしいライブは素晴らしいライブとして形に残す。



JB

1. JBのテーマ
2. おやすみ
3. at home
4. にんじん
5. 日和
6. ひよどり
7. きみの音
8. ?(楽しい時はいつでも短くて)
9. ヒガンバナ
10. セブンゴッズ
11. JBのテーマ


JBはふちがみとふなとの渕上純子(J)と、ラブジョイのbikke(B)の二人によるバンド。二人の歌、そして出す音はとても繊細でやさしく、特につい最近出た2nd『ソレユケ』は先立っていった者への敬意と愛であふれており、何ものにも代えられない素晴らしいものになっていると思います。その一方で、そこで鳴らされる音は鳴らしたくて鳴らされたような音しかなく、これがパンクでなくて一体なんであろうかと思わせるほどプリミティブなものでも、ある。


一曲目は、アルバムには未収録の曲。渕上さんのシンバルがけたたましく鳴らされ、bikkeさんの、bikkeさんとしか言いようのないギターがそれに対抗する。「これがJBや!」と言わんばかりの、ライブの幕開けにふさわしい一曲目でした。初期レインコーツ的ドタバタ感。純子さんが勢い余ってマイクにヘッドバットかましてしまい、必死にマイクスタンドを調整しながら歌っているのがおかしかった。
二曲目からは1st、『ルリパキダンス』から続けて三曲。しかも『ルリパキダンス』で一番好きかもしれない三曲。渕上さんのキーボードはとても普通だと思う。でも普通とは平凡という意味じゃなくて、とても安心するということ。一方で、bikkeさんのギターはとても変だ。何度聴いても不意をつかれるようで、かっこいい。流れ込んでくるような渕上さんの音と、飛び込んでくるようなbikkeさんの音。この対比がJBの音楽をおもしろくしてるんじゃないかと思います。二人の歌はそういう音に乗って、胸まで届く。“予定表にはしあわせと書いてきた”。「にんじん」の、この歌詞を胸に京都まで来ました。この日shin-biでこの歌を聴いた時、予定表は本当になったんだなという実感がふつふつと沸いてきて、胸があったかくなった。
「日和」の、“川”で区切られた向こう側とこちら側。向こう側からこちら側へは、声は届かない。こちら側から向こう側へは、わからない。それでも、わからなくても、歌を巻き上げる。胸をかき鳴らす。そんな渕上さんとbikkeさんの気持ちを想像して、胸が苦しくなる。それが向こう側からこちら側へ残された者として、こちら側をまっとうするということなのかな。
そして、「きみの音」も。向こう側への想いを馳せる曲だと思う。個人的には、この曲はチャイナさんのことを歌っているんじゃないだろうかと思っています。JBはチャイナさんも加えたJBCとして活動する予定もあったそうです。アルバムで聴けるドラムの音を聴くと、どうしてもそのJBCのことを想像してしまう。ライブではbikkeさんが「ツツタツ、ツツタツ」と、囁くようにエイトビートを口ずさむ場面がありました。bikkeさんは、目を閉じていた。
後半は「ヒガンバナ」、そしてMCをはさんで「セブンゴッズ」。MCではライブの冒頭の、マイクスタンドの件でなんやかんやといいわけなど。JBのMCはいつもドタバタしてておもしろい。なんだか間も合ってない。MCも、演奏も、観てるこちらの気持ちも。最初の「JBのテーマ」から最後の「JBのテーマ」まで、なんだか終始ドタバタしたまま通り過ぎてしまった。それはあわただしくも平穏な普段の生活のようで、そんな生活の中で見つける、見つけた、ひとつひとつの気持ちを。もっと大切に暮らして生きたいなと思いました。


山本精一 & THE PLAYGROUND

1. 飛ぶひと
2. 水
3. 時計をとめて
4. 宝石の海
5. 鼻
6. ?(ひきこもり?)
7. 待ち合わせ
8. 名前なんかつけたくないうた
9. 空の名前


encore
10.まさおの夢(with JB)


double encore
11.Candy Says
12.ふたつの木のうた


山本さんの歌はとてもサイケデリックだ。でもそれは極彩色がぐるぐると渦巻くようなあからさまなものじゃない。たとえば、「こんなとこに曲がり角あったっけ?」とか、「この廊下、こんなに長かったっけ?」とか、「そもそも今日って何月何日だっけ?」みたいな。日常に何食わぬ顔をして紛れ込んでいるような眩惑感。毎回ちがった顔を見せるこの感覚を味わいたくて、ライブに足を運んでいるのかもしれません。


「飛ぶひと」。ソロではすっかり定着したこの曲も、ドラムの千住くんを伴っているとまたずいぶんちがった印象。そうかと思いきや最後の“銀の巨人”というフレーズにふと、まるで一周まわって元の場所、元の時間に戻ってきたかのような感覚を覚える。山本さんの歌との距離感はやっぱり不思議だ。
「飛ぶひと」が終わって「水」が始まるまで、すごく静かな、永い時間があったような気がした。「水」はやっぱり特別な曲なんじゃないかと思う。須原さんも加えたPLAYGROUNDでの「水」はいつも以上に大きな波となって迫ってくるようで、息をするのも忘れて見上げてました。
ここで「予定を変えます。カバーをやります。」という山本さん。バンドとしても当然何も知らされてなかったようで、千住くんなどは目を丸くしてキョトンとしてました(笑)曲は、ジャックスの「時計をとめて」。でもそこにはジャックスのようなサイケ感は影を潜めて、あくまでポップスとしての「時計をとめて」だったように思います。曲の良さがじんわりと染みてくるような、とても新鮮な響き。
「鼻」は『幸福のすみか』の中でもすごく好きな曲で、ソロで取り上げてくれるのはとてもうれしい。“鼻を見る”。それ以外になにもないようなこの歌は、山本さんが歌うと余計に得体の知れないものとなる。あっちに行ったりこっちに行ったりで、まるで掴み所がない。そんな山本さんの歌に合わせられるPLAYGROUNDはほんとにすごい。長年寄り添ってきた須原さんはさすがというところだし、千住くんに関してはもう上手いとしか言いようがない。もちろんただ上手いだけじゃない、水のように柔軟な感性がないとあの演奏は無理だと思う。「鼻」の後はまたも予定とちがった曲みたいで、そんな千住くんもここでは(またも)どうしていいのかわからないという様子でした(笑)山本さんは山本さんで曲名を失念してしまったようで、必死に曲のニュアンスを伝えようとしてた。「ひきこもり」、とか言っていたかな。すごくいい曲だったのでまた聴きたい。あとこういう時の千住くんは、いつもより多めに叩く気がするのは気のせいでしょうか…(笑)
「最後の曲です、ありがとうございました。」と言って演奏されたのは「名前なんかつけたくないうた」。もう終わりかーとも思ったけど、PLAYGROUNDの演奏する「名前なんかつけたくないうた」に大満足。かと思いきや、間髪入れずに「空の名前」。完全に不意を突かれて、キリイシの時のshin-biを思い出して、涙が出てきた。“空の名前になれるなら夏の終わりの夕映えがいい”、“あなたのことを忘れるなら夏の終わりの夕映えがいい”…。終始薄暗い照明だったステージがぼんやりと、少しずつ色を帯びて、次第にきれいなオレンジ色に染まっていった。


アンコールは「まさおの夢」。何回聴いても変な歌だけど、PLAYGROUNDに加えてJBの二人も参加したそれはさらにカオスなものに。歌も、演奏も、ステージ上での配置やセッティングも。それはもうぐっちゃぐちゃで。その状況にあらためて、まさおの夢ってなんやろう?とか考えてみたり。まあ、楽しい時間になりました(笑)終わった後、深々とお辞儀をしながら山本さんに歌詞カードを返すbikkeさんが妙にかわいかったです。
アンコールの時だったかな。山本さんが「最後だからもう少しやります。」「そうや、JBもやったらええやん。」なんて言ってたけど、これは実現せず。でも、ダブルアンコールはありました。「めずらしい曲を」ということでヴェルベッツの「Candy Says」。歌い始めて、すぐ中断。「須原くん、コーラスは?」と、須原さんにコーラスを求める山本さん。こういうことをその場でやってのけるPLAYGROUNDはやっぱりおもしろいバンドだ(笑)「Candy Says」も先の「時計をとめて」と同様、割とまっすぐな演奏。でも、山本さんの歌はやはりどこかねじれている。
最後は「ふたつの木のうた」。この曲はベースが入らないそうで、「須原くんは帰ってください。」という山本さんにひどいと思いつつ、それがあまりに素だったので笑ってしまった。この曲に関してはいろいろと思うところもあるんだけど、それはまた今度。


演奏終了後、今月末で閉鎖となる会場shin-biへの、山本さんからの送辞のようなコメント。「shin-biよ永遠なれ。」「これから、いずこかの地で蘇るであろうshin-biに、我々は敢えてさよならは言わない。」とか、ちゃんと紙を見ながらだったから真面目にしゃべろうとしてたんだと思う。でも途中で笑い出してしまい、見てるこちらもどうしていいのかわからないような状態に。後ろ手を組んで見守る千住くんも苦笑気味でした(笑)最後の最後は、「僕は、のびあがり入道になりたい。」などとよくわからないことを言って締め。たしか鬼太郎にのびあがりという妖怪が出てきたけど、そのことかな?山本さんのこういう話、もっと聞きたい。