ひとりぼっちの人工衛星

初めてあの感覚を味わったのは小学校の、プールの更衣室でのことだった。たくさん人がいる中で、どうしようもなく一人というあの感覚。待ちに待ったプールを前にして、きゃーきゃーと歓声を上げる友だちたち。でもその声は蝉の鳴き声みたいにノイズになって、まるで頭に入ってこない。覚えているのは薄暗い室内と、ほのかに香る塩素の匂いと湿ったコンクリートの感触。みんなが、みんなと一緒に同じこの更衣室にいるのに、自分だけが異空間に迷い込んでしまったみたいだった。
別に対人恐怖症というわけじゃありません。人並みに友だちもいます。あの時だって友だちといっしょに教室を出て、笑いながら更衣室に入った。なのに、突然舞い込んできたあの感覚は一体なんだったんだろう?よくわかりません。ただ、どこか世間を斜めに見るような、ひねくれた考え方をするようになったのはこの頃からだったような気がします。


今でも知ってる人たちの中で、知らない人たちの中で、あの感覚を味わうことがある。そして今思うと、それはいつも夏のことだったように思う。
そういえば、今年はまだ蝉の声を聞いてないな。