この日記はフィクションです

朝目が覚めると雨が降っていた。むくりと起き上がってみると、その涼しさに驚いた。夏やぞ。もうすぐ七月やぞ。と心の中でぼやいてもう一度布団にくるまる。次に目が開いた時はすでにお昼を回っていた。
とりあえず昼ご飯をすませ、たしか行きたいライブがあったはずだとネットを巡回してみる。手帳やスケジュール帳の類は持ってない。あーそうそう、このライブ。窓の外を見る。雨が降っている。そんなことはすでに知っていたはずだ。なんとなく、乗り気じゃない。それを雨のせいにしようとした自分に少しイラつく。
部屋に戻り、プレーヤーに入ったままになっているCDを再生する。雨の日に聴く音楽はぼんやりと部屋中に広がって、はっきりと姿が見えない。じわじわとその領域を広げてくるピアノの音を聴いていたらなんだか恐ろしくなって、プレーヤーを止めた。音はピタリと止まったが、その音の気配はどこかに身を潜めたままこちらをうかがっているようだ。「ちゃんとしろ」と言われてるような気がした。今朝からのダメな自分の一つ一つを反芻して、余計に暗くなる。雨の音だけが聞こえている。